特集 臨床細菌検査
Ⅲ.疾患別検査の進め方
4.消化器 2)肝・胆道
谷村 弘
1
1京都大学医学部第二外科
pp.1268-1276
発行日 1983年11月1日
Published Date 1983/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912022
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本来,肝臓,胆嚢,胆管およびその中を流れる胆汁は,多少の細菌が存在しても0.6ml/分という正常な胆汁の流れによりVater乳頭から十二指腸へ排泄されるので,胆道感染症は起こらない.これに胆汁うつ滞の条件が加わると,胆汁が腸内細菌(特にグラム陰性桿菌)の増殖を助長し,胆道感染症が発症する1).このように胆道感染症が成立するためには,細菌感染と胆汁うつ滞という二つの要因を伴うことが必須条件であり(図1),その治療は胆汁うつ滞の解除と抗生物質の投与が主体となる2).胆道感染症における化学療法の施行に際しては,起炎菌と考えられる細菌を早期に分離,同定し,その菌に感受性が高く,かつ,肝臓や胆嚢組織および胆汁中移行の優れた薬剤を選択する3).そのためには,検体の採取,運搬,菌の分離,同定に際し,雑菌の混入,検体中細菌の偽陰性化を防ぎ,正しく起炎菌を把握せねばならない.
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