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はじめに
肝胆道系手術における縫合糸の選択には縫合部位の特徴や縫合法に応じてわれわれは概略次のごとき基準に従つている.
縫合糸が胆管腔内に露出する場合,すなわち全層縫合や粘膜縫合の場合には吸収性のポリグリコール酸縫合糸であるデキソンS(以下デキソン)を用いる.これは胆管腔内で確実に吸収され縫合糸が核となり結石や肉芽増殖を来たすことがなくまた本材料は組織反応が少なく,抗張力に優れしなやかで操作も容易であるからである.漿膜筋層縫合や手術の際の止血結紮には通常ブレードシルク(以下シルク)を用いている.また悪性腫瘍で腫瘍が摘除不能であつてbilio digestive anastomosisのみに終り術後の長期生存が望めないような症例に対しては全層縫合においてもシルクを用いる場合がある.これは本材料は非吸収性であるが適度な柔軟性をもち,結びやすく取り扱いが容易で何よりも縫合自体が確実に行なえるからである.門脈合併切除の際の門脈吻合や縫合に際してはポリプロピレンであるプロリンを用いるがこれは非吸収性で,monofilamentであることにより,すべりが非常に良いため縫合時組織を痛めず,血栓形成がなく反応や炎症を生ぜず,縫合部の張力も一様にかかり均一な縫合ができるからである.さらに弾性に富むためある程度の伸縮に対して可逆性である.ただし限度をこえると不可逆性となり,かつ弱くなるので牽引に際し注意する必要があり特に結び目にゆるみを生ずる恐れがあるので男結びの上にさらに2〜3回の結紮を追加するようにしている.乳頭形成術の際の総胆管粘膜と十二指腸粘膜との吻合に際しては強力な消化酵素にさらされるためと血流が豊富で出血し易いために非吸収性のシリコン加工編糸ナイロン糸(サージロン)を用いているがこれは特殊シリコン加工により使いやすくなつており抗張力は強く絹糸のように取り扱いが容易でなおかつ絹糸に比べて組織反応が少なく,糸のケバ立ちがほとんどみられないからである.次いで実際にわれわれの行なつている肝,胆道手術における縫合法や縫合糸を紹介する.
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