特集 臨床細菌検査
Ⅲ.疾患別検査の進め方
5.尿路
中牟田 誠一
1
,
熊澤 浄一
1
1佐賀医科大学泌尿器科
pp.1277-1282
発行日 1983年11月1日
Published Date 1983/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912023
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尿路感染症は臨床各科で頻度も高く,不完全な治療により腎不全に陥る危険もある重要な疾患である.尿路感染症の診断では,まず感染があるか否かを知り,炎症の部位および拡り,その原因ないし誘因を明らかにすることが大切である.治療は,正しい起炎菌を決定し,それに対する適切な化学療法が第一である.したがって尿路感染症の診断,治療には検尿が必須の検査法であることは言うまでもない.しかし,実地医家では多忙のため,また大病院では,新しい検査法にたよりすぎてもっとも基本的で重要な検尿法がないがしろにされ,思わぬ誤診を犯すこともあるので注意を要す.
尿路感染症は急性と慢性,単純性と複雑性または部位により上部尿路と下部尿路に分類される.上部尿路の代表は腎盂腎炎であり,下部尿路の代表は膀胱炎である.臨床的にもっともよく経験するのは,急性単純性膀胱炎,急性単純性腎盂腎炎,慢性複雑性膀胱炎,慢性複雑性腎盂腎炎である.慢性複雑性では全身的基礎疾患や尿路の基礎疾患が存在し,抗菌剤の投与だけでは治療し得ない.尿路の基礎疾患として尿路結石,カテーテルなどの尿路異物,前立腺肥大症,神経因性膀胱,先天性奇形などによる尿の停滞,尿路腫瘍,膀胱尿管逆流現象など多彩な疾患が含まれており,検尿のみならず,レ線検査,膀胱鏡など泌尿器科的検査も必要となってくる.
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