基礎科学からの提言・4
微生物が作る酵素と臨床分析
清水 昌
1
,
山田 秀明
1
Sakayu SHIMIZU
1
,
Hideaki YAMADA
1
1京都大学農学部農芸化学教室
pp.1159-1165
発行日 1983年10月15日
Published Date 1983/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911997
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
筆者らは,微生物が行う生命の営みの中に秘められたさまざまな現象を追い求め,それらを解き明かすことを日常の主な仕事としている.例えば,今まで知られていなかった反応や代謝産物を見つけたり,関連する酵素の性質を解明したりしている.ただ,筆者らが行っている微生物の研究が他と異なる点は,つねに応用という観点からこれらを見つめている点にある.
"応用微生物学"とはどのようなものかを身近に理解していただくには,本誌の読者の場合,西洋医学から輸入された微生物学の分野と比較してみたらよいのではないかと思う.わが国には,酒,みそ,しょう油などの製造に源を発する,世界にあまり類をみない大きな伝統的微生物産業の分野があることはご存じのことと思う.この分野では,これまで,いかにして人類にとって有用な物質を大量に生産することができるか,ということを目標として,有用な微生物を探索し,これらを飼い慣らす技術を磨いてきた.すなわち,有用物質を大量生産するという,きわめて農業的な発想から出発したものが,"応用微生物学"である.一方,医学に源を発する微生物学は,いかにして有害な病原菌を殺してしまうかを主な目標にして進歩してきた分野と言えよう.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.