基礎科学からの提言・1【新連載】
人工腎臓開発研究に参加して
早野 茂夫
1
,
篠塚 則子
1
Shigeo HAYANO
1
,
Noriko SHINOZUKA
1
1東京大学生産技術研究所第4部
pp.791-796
発行日 1983年7月15日
Published Date 1983/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911917
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はじめに
筆者らに人工腎臓関係のセンサー(イオン電極)の開発について話があったのは1976年の春,東京大学工学部精密機械工学科の舟久保教授からであった.当時私たちは人工腎臓がどんなものかまったく知らず,ただ腎臓に形がよく似ている機械を漠然と想像したものである.いかなるものか見当もつかないので,舟久保教授の人工腎臓開発グループに参加しておられた医学部教授を病院にお訪ねして話をうかがい,また実際に患者さんが人工腎臓を使っているところを見せていただいて,人工腎臓と呼ばれているのが,大量の透析液を用いる大きな透析器であることを初めて知ったのである.ちょうど,まだあどけなさを残しているような少年が透析を受けており,これから一生,週に2〜3回,1日5〜8時間を透析のためにベッド上で過ごさねばならないと聞いたとき,人工腎臓改良の必要性を痛感させられたのであった.
人工腎臓はすでにご存じのように,腎臓機能が低下した場合に腎臓に代わって血液を浄化する装置で,膜を隔てて血液と透析液とを接触させ,除かねばならない老廃物(主として尿素,尿酸,クレアチニン,ナトリウム,カリウム)と水分を除く働きをしている.透析を受ける患者数は年々増え続け,腎移植を受けない限り,生涯透析を続けなければならない人が多いため,患者の社会復帰という面からも,また病院の設備の面からも,携帯型人工腎臓の実用化が切望されている.
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