分離分析の技術Ⅱ・6
高速液体クロマトグラフィー—(5)グリコヘモグロビンの分析
中 恵一
1
Keiichi NAKA
1
1大阪市立大学医学部臨床検査
pp.676-681
発行日 1983年6月15日
Published Date 1983/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911895
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はじめに
ヘモグロビンは,多方面で数多くの研究がなされ,現在,生体構成巨大分子としてもっとも多くの成果が発表されているものの一つである.特に分子レベル,原子レベルに及ぶ研究の発達により,分子病である異常ヘモグロビン症の数多くが,アミノ酸配列や蛋白質としての高次構造とそれに由来する生体内での状態,さらにそれから引き起こされる生理的な異状についてまで,説明がなされるようになった.
正常な成人のヘモグロビンは,ヘモグロビン(Hb) A0, HbAII, HbF,とHbAIの分画から成り,それぞれ約90%,2〜3%,1%以下,約6%観察される.これらのヘモグロビンは,すべて鉄を含むヘムと蛋白であるグロビンから成る色素蛋白体で,グロビンを構成するアミノ酸一次構造が若干おのおので異なる.HbA0は,141個のアミノ酸から成るα鎖2個と,146個のアミノ酸から成るβ鎖2個から成る四量体で,球状の構造を持ち,各グロビン鎖,α,βはそれぞれ1個のヘムをその分子構造内のくぼみに保有している.HbAIIおよびHbFは,HbA0のβ鎖アミノ酸一次構造の異なるδ鎖,γ鎖によって,それぞれ置き換えられている.最後のHbAIは,HbA0と同一のα2β2のグロビン構造を持ち,アミノ酸一次構造は同一であるが,一部のアミノ酸側鎖が修飾を受けているという点だけが異なる.
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