今月の主題 妊娠
技術解説
妊娠反応
谷沢 修
1
,
杉田 長敏
1
,
高木 哲
1
,
森 政雄
1
Osamu TANIZAWA
1
,
Nagatoshi SUGITA
1
,
Tetsu TAKAGI
1
,
Masao Mori
1
1大阪大学医学部産婦人科学教室
pp.1567-1572
発行日 1982年12月15日
Published Date 1982/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911740
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
妊娠を早期に診断することは,産科診療上必要なばかりでなく,広く医療の分野で要請される問題と言えよう.妊娠時には子宮内で発育を続ける胎児あるいは胎盤のために,母体のは数々の臨床上の徴候が現れてくる.すなわち,無月経,子宮の増大,乳房の変化など性器に関係したもののほか,早朝空腹時の悪心・嘔吐を主訴とする"つわり",頻尿感などが妊娠早期にみられる.しかし,これらの徴候は必ずしも妊娠に特異的とは言えず,より客観的な妊娠診断法が古くから求められてきた.
妊娠反応として最初に用いらてたのは妊婦尿による生物学的妊娠反応であり,ほぼ1930〜1960年の30年間はこの方法によった.すなわち,妊娠時に胎盤で産生し尿中に大量に出現するヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin;HCG)の小動物の性腺に対する反応を見る方法で,特異性において優れているものの,動物を用いるための煩雑さは避け難かった.次いで1960年以降は,HCGの抗原性に着目した免疫学的妊娠反応による手法が開発され,その特異性の高いことと感度,手技の簡易迅速さのゆえに,現在では妊娠反応として広く臨床的に用いられている.さらに,本法はHCGの有無—定性反応にとどまらずHCGの定量測定を行うことにより,さらに広い臨床応用がなされている.本稿では,妊娠反応の種類,実施方法,臨床上の意義などについて述べてみたい.
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.