今月の主題 レセプター病
総説
レセプター病
肥塚 直美
1
,
對馬 敏夫
1
Naomi HIZUKA
1
,
Toshio TSUSHIMA
1
1東京女子医科大学内科2
pp.899-905
発行日 1982年8月15日
Published Date 1982/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911614
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はじめに
細胞間情報伝達系としては神経系と内分泌系があり,その情報識別・伝達機構として伝達物質(神経伝達物質またはホルモン)の受容体(レセプター)の概念が広く導入されてきた.近年,この受容体の研究が盛んに行われ,伝達物質の作用機構の解明の一役を担い,臨床的にもこれまで成因不明とされていた疾患の中に受容体の異常によるものが発見されている.
内分泌系を例にとると(図1),ホルモンはその産生臓器で合成,貯蔵され,必要に応じて分泌される.分泌は通常,これを刺激するか,あるいは抑制する二つの機構によって,調節されている.分泌されたホルモンは血流により標的細胞に運ばれ,そこでそのホルモンと特異的に反応する受容体と結合し,この結合により惹起された生化学的変化は,最終的にそのホルモンに特有な生物学的作用の発現に至る.このホルモンの作用は直接的あるいは間接的にホルモン産生臓器に感知されて,ホルモンの合成・分泌を調節する.したがって,ホルモンが生体の恒常性を維持するためには,これらのすべての機構が正常に機能することが必要である.従来,内分泌疾患は,ホルモン分泌過剰による機能亢進症と分泌低下による機能低下症とに大別されてきた.しかし,機能低下症の症状を呈するにもかかわらず,ホルモン分泌が正常あるいはむしろ過剰になっている状態や,外因性のホルモンに反応しない状態が存在することが,古くから知られている.
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