今月の主題 貧血
技術解説
鉄結合能
宮崎 保
1
,
桜田 恵右
1
,
島田 泰栄
1
1北海道大学第3内科
pp.603-609
発行日 1981年6月15日
Published Date 1981/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911252
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血清中の鉄は生理的状態では,すべてトランスフェリン(transferrin)と結合して存在している.このトランスフェリンは2原子の鉄と結合するが,通常は血清中約1/3のトランスフェリンが鉄と結合して存在し(=血清鉄,serumiron;SI),約2/3のトランスフェリンは鉄と結合していないもの(=不飽和鉄結合能,unsaturated iron binding capacity;UIBC)として存在する.したがって血清の鉄と結合しうる能力(範囲)は血清鉄+不飽和鉄結合能であり,これは総鉄結合能(total iron binding capacity;TIBC)と呼ばれている.
鉄結合能は鉄欠乏状態,鉄過剰状態,無トランスフェリン血症など鉄代謝異常を示す疾患あるいは病態においてそれらを反映するごとく変化を示すので,その測定は血液疾患(鉄欠乏性貧血はもちろんであるが,鉄芽球性貧血,各種溶血性貧血,真性多血症,ヘモジデローシス,ヘモクロマトーシスなど),肝疾患(急性肝炎,慢性肝炎など),消化管疾患(静脈瘤,潰瘍.癌よりの出血)のみならず,炎症及び腫瘍性疾患などの診断,治療方針決定ならびに子後判定に極めて有用である.以下,鉄結合能の意義と,鉄結合能測定としてラジオアッセイ法,電極法を紹介し,それらの問題点と測定成績について述べる.
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