総説
一元放射状免疫拡散法の実施
右田 俊介
1
1金沢大がん研究所
pp.259-271
発行日 1976年3月15日
Published Date 1976/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542909303
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生体成分を測定する場合に免疫学的な方法が,しばしば用いられる.その特徴は1特異性,2微量性,3反応の即時性にある.特異性は,抗原抗体反応の特徴であって,混合物の中のある1種類をそのまま定量することができる.微量性は,反応の操作によって1mgから10ng,放射性同位元素を使えば0.1ngまでの範囲を検出することができる1).即時性は,抗原抗体反応の平衡定数が105〜107であって,瞬間的に抗原抗体結合物に変わるのであるが2),これを検出する手段によっては必ずしも短時間で終わるとは限らない.次に欠点としては反応の不安定性であって,それは検出に用いる抗血清の不安定性,あるいは反応自体の不安定性などにより再現性が悪く,十分な注意のもとに行わないと,条件によって異なった結果が得られることである.免疫学的な定量法として現在最もよく使われるのは,抗体カンテン板による一元免疫拡散法(SRD)である.この方法は1965年にMancini3)とFahey4)によって別々に発表され,人によってMancini法,Fahey法と呼ぼれている.これは抗血清とカンテンを混合した平板に穴をあけて,階段希釈した抗原を一定量ずつ穴に入れると,作られる沈降輪によって抗原濃度が算定できるという発表であった.しかしこの2人の発表は,詳細な点では異なっていた.その相違点,両者の長所および短所は何であるかが第一の問題点である.
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