検査と主要疾患・38
脳腫瘍
神保 実
1
1東京女医大・脳神経外科
pp.214-215
発行日 1976年2月15日
Published Date 1976/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542909288
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脳腫瘍とは,頭蓋内に発生する新生物の総称であるが,これを二つに分けることができる.一つは,脳組織そのものから発生する腫瘍で,神経膠腫といわれる.神経膠腫は浸潤性に脳を侵し,いわば悪性の脳腫瘍である.手術による根治は不可能である.脳腫瘍全体の30〜40%を占める.他の一つは,同じく頭蓋内に発生するのであるが,脳組織以外の組織,例えば,髄膜,脳下垂体,脳神経,胎生期の遺残物などから発生する腫瘍である。髄膜腫,下垂体腺腫,聴神経腫瘍,頭蓋咽頭腫などである.これらの腫瘍が脳を圧迫するわけであるが,周囲脳組織との問に境界鮮明な被膜をもって発育するため,手術によって根治可能である.脳腫瘍全体の約40%を占める.以上の大ざっぽな分け方では律しぎれない脳腫瘍ももちろんあるわけで,その中で大切なのは転移性脳腫瘍である.これは癌の脳転移であって,通常,原発巣から血行性に脳に転移する.いわゆる癌が最初から脳に発生することはない.
頭蓋内には,脳がコンパクトに納められているから,そこに余計な新生物が発生すれば,当然のことながら頭蓋内圧が上昇してくる.頭痛,嘔吐,眼底のうっ血乳頭などが圧上昇の症状である.また,脳組織を圧迫して,種々の神経症状を呈する.片麻痺,てんかん,視力,視野の障害,運動失調などであるが,場合によっては精神症状をも呈する.脳腫瘍の診断で大切なことは,これらの症状はいずれも進行性であるということである.
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