特集 日常臨床検査法
Ⅴ.細菌
3.尿路感染症における検査上の注意点
名出 頼男
1
1名古屋保健衛生大・泌尿器科
pp.1511-1514
発行日 1974年12月25日
Published Date 1974/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542908818
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
尿路感染症概論
多くの細菌検査室において最も頻繁に扱われる検体は尿である.尿路の大部分は健康人では無菌であり,したがって尿路感染症にあっては,採尿法に誤りがないかぎり起因菌の検出は容易であることと,薬剤耐性菌の検出率の高いことがこの現象をもたらす大きな原因である.
一口に尿路感染症と言っても,その内容は単一ではなく,腎盂腎炎を主体とする上部尿路感染症と膀胱炎を主体とする下部尿路感染症に大別される.尿路感染症も,他の一般感染症と同じく感染成立にあたっては種々の感染準備状態が基底に存在し,その程度,可逆性もしくは自然消失傾向の有無などにより感染症の経過が異なる.表にその代表的なものを示したが,これらは互いに重複することが少なくない.基礎疾患の判然としないものは単純性症と呼ばれ,表にある器質的・機能的尿路異常のあるものは複雑性症と呼ばれることが多い.単純性症の多くは急性症で,複雑性症のかなりのものは慢性症となる.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.