Senior Course 血清
骨髄像の見方,考え方(2)造血細胞の分化と成熟
桑島 実
1
1日大臨床病理
pp.234
発行日 1973年2月15日
Published Date 1973/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542908001
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赤血球,白血球,血小板などの起源をたどれば,どの細胞にも分化することのできる1つの幹細胞があるとする一元説と,それぞれの細胞は,それぞれ別の母細胞があるとする多元説がある.後者の説は胎児の造血組織の形態的研究から発したものであるが最近,放射性同位元素を用いたり,染色体分析を行なったり,致死量の放射線を動物に照射したのち,同種の動物の骨髄液を血管に注入し脾臓にできる造血細胞のコロニーをみる方法などの発達に伴い,幹細胞の存在が考え方のうえで必要になってきた.幹細胞とは自己と同一な細胞に増殖することができるとともに,何らかの因子,刺激などで分化,成熟した細胞となる能力のある細胞をいう.しかし現在,幹細胞を形態的にとらえるまでには至っていない.
骨髄像を形態的に観察する場合には,幹細胞なり母細胞からの分化と成熟の過程について知っておくことが必要である.これについては細胞のDNAに放射性同位元素をラベルしては,その消長をみる研究の成果によるが,まだ完全に解明されているわけではない.いずれにしても,分化とは,核分裂を伴う場合と伴わない場合があるが,ある細胞が形態的,機能的にやや異なる次の段階の細胞になることをいい,成熟とは,ある細胞がその細胞のもつ特徴を表わしていく過程をいう.
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