総説
赤血球凝集反応のメカニズム
石山 昱夫
1
1東大法医学
pp.649-654
発行日 1971年7月15日
Published Date 1971/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907246
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はじめに
血清学領域においては,凝集反応は沈降反応,補体結合反応とともに,あるいはこれらに比していっそう簡便かつ鋭敏な反応として利用されており,遊離細胞や細菌膜表面に局在する抗原の検出には不可欠な反応系である.また近年,抗原の純化・精製がすすむとともに,得られたサンプルを血球やカオリン,ラテックスなどの粒子に付着させ,対応する抗体を凝集反応によって検査するなど,臨床面における応用範囲も著しく拡大している.
一方,このように簡便な凝集反応も,既知のごとく実施様式にはかなりきびしい条件が必要であり,反応メジウムの塩濃度,タンパク濃度,血球の陳旧度,血球濃度などが凝集反応の結果に著しい影響を与える.この理由としては,血球のごとき巨大かつ強い陰性荷電を帯びているコロイド粒子を取り扱う場合には,抗原抗体反応によってひき起こすと期待される現象よりも,コロイド粒子が本質的に帯びている性質のほうが強く現われてしまうからで,予期されていた抗原抗体反応系が肉眼的に観察されないということがしばしば経験される.したがってまず,血球のコロイドとしての性質について検討を加えながら,凝集反応のメカニズムを分析することが肝要であろう.
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