研究
試験紙による血清尿素窒素の簡易・迅速定量法
斉藤 正行
1
1東京大学 東大分院臨床化学
pp.387-391
発行日 1961年6月15日
Published Date 1961/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905845
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腎疾患において,尿素,クレアチニン,尿酸,アミノ酸等の非蛋白窒素の総量を示す所謂残余窒素量が血中に停滞する現象は,昔から注目され,広く診断に利用されてきている。最近クリアランス法という新しい腎機能検査法が展開されたが血中残余窒素測定は依然として腎障害程度特に予後の観察,決定に欠かすことのできないものとされている。然しながらこの素晴らしい検査法もその測定法の容易でない点から設備と時間に制限のある診療所,小病院においては日々の診療に利用されていない。確かに残余窒素の測定は除蛋白濾液中に尿素,クレアチニン,尿酸などといろいろの形で存在する窒素化合物を完全灰化するに際し,時間がかかり更に蒸溜,滴定または比色操作という繁雑さが加わり普及を妨げている。
勿論この色々の窒素化合物中の幾つかは一つ一つがかなりの増減意味を持つ。しかし残余窒素の大半を占めるものは尿素窒素であり,その量的変動が残余窒素量の変動を支配し,他の窒素化合物一つ一つの増減はほとんど残余窒素量の変動に影響を与えない。このことは腎疾患で残余窒素が高度に上昇した時は更にハッキリし,その80〜90%を尿素窒素が占めるようになる。したがってまつたく同じ腎機能の評価ができるものならば何もめんどうな残余窒素量を測定しなくとも主導権を握り,より測定の簡単な尿素窒素を測定する方が賢明といえよう。
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