特集 造血器腫瘍
Ⅲ 検査法の基礎知識
6.染色体検査法
嘉数 直樹
1
Naoki KAKAZU
1
1京都府立医科大学衛生学教室
pp.1283-1295
発行日 2002年10月30日
Published Date 2002/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905229
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はじめに
今世紀に入って,造血器腫瘍の診断と治療の両面において大きな展開が繰り広げられている.診断面においては,2001年に包括的な造血器腫瘍の病型分類法として新WHO分類が発表された1).造血器腫瘍は,血液塗抹標本あるいはリンパ節などの生検病理標本における細胞や組織の形態学的所見に基づいて病型分類されてきた.しかし近年,造血器腫瘍の病型と染色体異常との関連について知見が集積してきたため,新WHO分類では,頻度の高い特異的転座を有する病型が独立した疾患単位として分類されている.
一方,治療面では,2001年にCMLに対するSTI571やCD20陽性の低悪性度リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫に対するリツキシマブが相次いで認可され,分子標的療法として本格的に臨床に導入されるようになった.CMLではt (9;22)(q34;q11)転座,マントル細胞リンパ腫ではt (11;14)(q13;q32)転座が,病型に特異的であり,それぞれの診断において染色体検査は重要な意味をもつ.今後,特定の染色体・遺伝子異常に選択的に作用する分子標的療法が次々と開発されるであろう.それに伴い,染色体検査で的確に病型特異的転座を検出することは,診断はもとより,治療法の選択のうえでもさらに大きな意義をもつようになるであろう.
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