特集 造血器腫瘍
序文
血液学の潮流
池田 康夫
1
Yasuo IKEDA
1
1慶應義塾大学医学部内科学
pp.1190-1191
発行日 2002年10月30日
Published Date 2002/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905214
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2001年2月ヒトゲノムブロジェクト国際コンソーシャムとセレラゲノミクス社は同時にヒトゲノムの全塩基配列を報告し,ヒトのもつ遺伝子が約4万種類前後であることを明らかにしたが,それを受けたポストゲノム時代にはこれらの膨大なゲノム情報をどう活かして行くかが問われており,ゲノム全体を網羅的に解析する手法としてのゲノミクス,蛋白質全体を解析する技術としてのプロテオミクスの新しい研究分野に力が注がれることになる.
20世紀後半の分子生物学,細胞生物学の著しい進歩は,形態学を基礎として発展して来た血液学を大きく転換させたが,ポストゲノムの時代においても基礎研究,臨床の両面において,血液学はダイナミックな展開をみせており,他の医学領域の追従を許さない.塩基配列多型,変異の同定,網羅的遺伝子発現量の解析,さらにはそれらの遺伝子によりコードされる蛋白質の網羅的解析を通じて,造血器腫瘍の分子病態の解明,新しい疾患概念の提唱,新しい診断法の開発,治療効果に関与する因子の解析,疾患の予後予測法の開発,さらには新しい分子標的療法の開発など,臨床現場に直結し得る多くの研究成果が期待されている.
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