今月の表紙 電気泳動異常パターンの解析シリーズ・7
異常なテイリング像を示すアルカリホスファターゼの解析
堀井 康司
1
Koji HORII
1
1慶應義塾大学医学部中央臨床検査部
pp.706-708
発行日 2002年7月15日
Published Date 2002/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905134
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血清アイソザイム分析を行っていると時々びっくりするような異常な像に出会うことがある.今回紹介するアルカリホスファターゼ(ALP)の分析中に認められた4症例もその1つである.図1をみていただきたい.図下段に示した蛋白分画像からわかるように4症例はいずれも原点(塗布点)よりアルブミン易動度までテイリング状の幅広い活性を示す異常な像であった.しかもこれらの異常ALPはいずれも全例死亡直前に出現した.
ALPアイソザイムは検出される易動度によって陽極側から順にALP1からALP6に分類される.正常な場合に認められるのはALP2(肝由来)とALP3(骨由来)でありALP5(小腸由来)も一部検出される.ALP4(胎盤由来)は妊娠後期に認められるが,腫瘍が産生するものも知られている.またALP1は肝・胆道疾患時に出現し膜成分と結合しているため高分子である.同様にALP6も高分子であるが,これは免疫グロブリンとの結合による.これらアイソザイムは,易動度的に一部重なる場合があるが通常バンドとして検出され,これらの症例のようにテイリング状に活性染色されることはない.4症例の年齢・性・診断名・死因および異常ALP出現時の血清酵素活性を表1に示した.共通しているのはいずれも死因が肺炎であることとALPと乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の活性上昇で,特にLDHはLDH2,3の上昇であった.
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