トピックス
橋本脳症―見過ごされている治療可能な疾患
米田 誠
1
,
藤井 明弘
1
,
栗山 勝
1
1福井医科大学第二内科
キーワード:
橋本脳症
,
抗甲状腺抗体
,
抗神経抗体
,
CJD
Keyword:
橋本脳症
,
抗甲状腺抗体
,
抗神経抗体
,
CJD
pp.317-319
発行日 2002年3月15日
Published Date 2002/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905067
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.はじめに
橋本甲状腺炎は,日常診療で遭遇する機会の多い自己免疫疾患の1つである.抗サイログロブリン抗体(TGAb)や抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)などの抗甲状腺抗体が患者血清で陽性となる.病状の進行とともに甲状腺濾胞細胞が変性・破壊され,本症患者の約1割が甲状腺機能低下症をきたす.甲状腺機能の低下は,新陳代謝の低下によってムコ多糖類の組織間隙への沈着をきたし,いわゆる"粘液水腫"を引き起こす.無治療の患者では,さらに,記銘力低下,精神症状から意識障害まできたすことがあり,粘液水腫脳症として広く知られている.甲状腺刺激ホルモン(TSH)や甲状腺ホルモン(遊離T3,T4)の測定が粘液水腫脳症の診断・治療と経過観察に有用である.
ところが,橋本慢性甲状腺炎患者のなかには,甲状腺ホルモン値は正常であるにもかかわらず,自己免疫機序によって精神神経症状をきたす一群が存在し,橋本脳症という疾患概念が提唱されている.また,橋本脳症の臨床像は多彩であり,一部は,最近,狂牛病問題で注目されているクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob dis-ease;CJD)と極めて類似した臨床像を呈する1).
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.