特集 細胞診―21世紀への展望
第4章 判定の実際
30.感染症
堤 寛
1
Yutaka TSUTSUMI
1
1東海大学医学部病態診断系病理学部門
pp.1399-1408
発行日 2000年10月30日
Published Date 2000/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904588
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はじめに
感染症の病理診断で重要なポイントは,病原体の同定・推定が治療に直結することにある.組織診に比べて細胞診は病原体同定がしやすい場合が少なくない.病原体に対する組織の反応パターンの認識は組織診に劣るものの,この点もある程度まで判断可能である.日常の病理診断においては,良性悪性の判定に重点をおきがちとなり,つい病原体に関する記述がおろそかになる傾向があるのは,おおいに反省すべきである.細胞診のクラス分類が悪性腫瘍スクリーニングのためのシステムである点は,感染症などの非腫瘍性疾患の細胞診断を軽視しがちとなることを助長している.非腫瘍性病変に対しても推定病変を付記する習慣を普段から身につけたいものである.
本稿では,診断確定に寄与する組織・細胞化学にふれつつ,感染症の細胞診断に役だつ細胞所見をアトラス風に提示したい.ウイルス感染症から寄生虫症まで,なるべく広い領域をカバーするよう試みたので,個々の感染症に関する解説はその多くを省略せざるを得なかった.感染症に関する詳細や文献は成書・総説を参照されたい1~5).
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