特集 細胞診―21世紀への展望
第4章 判定の実際
29.歯科:顎骨内嚢胞性病変
伊藤 由美
1
,
小野田 雅美
2
,
田中 陽一
3
Yumi ITO
1
,
Masami ONODA
2
,
Yoichi TANAKA
3
1神奈川歯科大学口腔病理学教室
2東京歯科大学市川総合病院臨床検査科病理
3東京歯科大学市川総合病院臨床検査科
pp.1395-1398
発行日 2000年10月30日
Published Date 2000/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904586
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はじめに
顎骨領域の嚢胞性病変は,身体の他の部位に比べると圧倒的に多い.全身骨格にみられる線維性骨異形性症,化骨性線維腫などのほかに,顎骨内に遺残する歯原性上皮,歯原性外胚葉性間葉に深くかかわった病変が多数存在する1).組織像も多彩で,またその発生頻度は,非歯原性病変に比べて明らかに高い.炎症性の成因による歯根嚢胞・残留嚢胞が半数以上を占めるが,含歯性嚢胞,歯原性角化嚢胞などの発育性嚢胞も多く認められる2).さらに,腫瘍の嚢胞性変化も顎骨では比較的頻度が高く,嚢胞との鑑別診断が必要である.その際,穿刺吸引細胞診(FNAC)の情報は重要であり,近年報告も増加している3~7).しかし,鑑別を要する病変は多彩で,明確な細胞診断基準を呈示するに至らない病変も多い.現在,最も明確な基準を備えている歯原性角化嚢胞とエナメル上皮腫を中心に,判定の実際を述べる.
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