コーヒーブレイク
一期一会の人々
屋形 稔
1
1新潟大学
pp.1002
発行日 1999年9月15日
Published Date 1999/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904172
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一期一会という言葉は茶会の心得の真髄ということである.生涯にただ一度まみえるという人生の深い境地を洞察したものであろうが,実際振り返ると一度だけでなくともそれに近い交わりを持った人々は数多い.名もない人もいれば高名な人もいるが,いずれにしろ長い年月を経てその人々がふと蘇って惜別の念が何とも深まるときがある.年月の貴重さと,光陰矢のごとく感ずるのはこうした一刻である.
まる40年前に米国東部を歩いたときに相まみえ別れた医学関係の人々のこともすぐ頭に浮ぶ.当時サンフランシスコに留学中であったが,中東部の主として内分泌学者を訪れ,心に残る印象を与えられた.ハーバード大学のThorn博士は副腎疾患の最初のテストになったThornテスト(副腎刺激テスト)で世界に名の知られた方で,恩師Forsham博士の兄弟子でもあった.そのせいか初対面から親しく患者の回診を見せてくれた.当時クッシング症候群診断に登場したばかりのSU(メトピロン)テストを初めて知り,帰国後の追試の1つになった.この方は米国でよく耳にする仕事に寸暇を惜しむ余りに奥さんと離婚に至ったことを後で聞かされ,学者の厳しさを実感した.
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