今月の主題 マスト細胞
話題
肥満細胞欠損動物
前山 一隆
1
Kazutaka MAEYAMA
1
1愛媛大学医学部薬理学
キーワード:
肥満細胞欠損マウス
,
W/Wv
,
肥満細胞欠損ラッ
,
Ws/Ws
,
ヒスタミン遊離
Keyword:
肥満細胞欠損マウス
,
W/Wv
,
肥満細胞欠損ラッ
,
Ws/Ws
,
ヒスタミン遊離
pp.775-777
発行日 1999年7月15日
Published Date 1999/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904123
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
1877年にPaul Ehlichが始めて肥満細胞を染色し,後にアナフィラキシーショックをもたらすヒスタミンを顆粒に貯蔵していることが明らかになって以来,肥満細胞はI型アレルギーの研究対象となってきた.肥満細胞の由来に関しては,北村が肥満細胞欠損マウスであるSl/Sld,W/Wvを用いて骨髄幹細胞由来であることを証明した1).肥満細胞は生体内での局在,顆粒中のムコ多糖やプロテアーゼの違い,薬物に対する反応性の差から結合組織型と粘膜型肥満細胞に大別される.近年,結合組織型肥満細胞の分化にStemcell factor (SCF;kitリガンド)とc-kit受容体のシグナル伝達系が重要な役割を果たしており,SCFならびにc-kit受容体はそれぞれSl,W遺伝子にコードされていることから,上記の肥満細胞欠損マウスはSl,W遺伝子の突然変異により骨髄幹細胞から結合組織型肥満細胞へ分化できないため生じたことが明らかとなった2).他の特徴として,メラノサイトの欠損,生殖細胞の欠損が知られる.一方,粘膜型肥満細胞は,IL-3の刺激により分化,増殖することがわかり,特に寄生虫感染により腸粘膜で増えることが知られている.1991年に北村らが白斑を有する突然変異ラットを発見し,その交配から肥満細胞欠損ラットを確立した.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.