今月の主題 高血圧と臨床検査
巻頭言
高血圧症と臨床検査
高橋 伯夫
1
Hakuo TAKAHASHI
1
1関西医科大学病態検査科
pp.611-612
発行日 1999年6月15日
Published Date 1999/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904089
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血圧は心拍出量(CO)と総末稍血管抵抗(TPR)により規定され,それぞれは元来,変動する生理的指標である.COとTPRの両者は流血中の液性因子や,血管の構成要素自体あるいはそのごく近辺の組織で産生される血管作動性物質などにより規定され,これらの物質の変動あるいはその特異的な受容体の変化により変動することにより,血圧が変動する.COは体液量に依存して変化するので,体液量を直接調節する重要な臓器である腎の役割が重要である.腎の水・ナトリウム(Na)排泄能はアルドステロン,糸球体濾過量,第3因子として一括される体液性因子などにより調節されている.慢性糸球体腎炎などのように健全な糸球体数が減少すればNa排泄能は低下し,これを補完するために血圧が上昇し,糸球体内圧を高めて限外濾過を亢進させて水―Naバランスを保持している.すなわち,高血圧の犠牲のもとにNaバランスを保つもので,腎の血圧―利尿曲線は高圧域に偏移(シフト)するのが高血圧の特徴であり,腎の占める役割の重要性が指摘されている.この際の血圧上昇には体液性因子,神経性因子が種々複雑に絡んで機能しているので,これらの因子の変動を計測することで,高血圧の病態診断の一助となる.
本特集では,多くの血管作動性物質の生理,病態生理的役割について個々に論説をお願いしている.また,動脈硬化症は腎血管性高血圧,脳血管障害に起因する高血圧,狭心症に伴う高血圧,などの原因として注目すべき病態であり,その危険因子の評価,動脈硬化症の形態診断なども重要である.この点についても,各論の中で論説をお願いしている.
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