講座
高血圧の検査
五島 雄一郎
1
1慶応義塾大学医学部内科
pp.45-48
発行日 1960年2月10日
Published Date 1960/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202029
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はじめに
昭和27年以来日本の死亡率は,従来第1位であつた結核に代つて中枢血管傷害死,つまり脳出血や脳軟化症による死亡が第1位を占めるようになり,毎年13万人から15万人の多くの人命が失われています.その為に脳出血の原因である高血圧の治療が大きな問題となつています.然し高血圧という病気の原因については,いろいろの説がありますが,現在のところ,はつきりこれが原因だと言われるものがありません.勿論腎臓病から起るものを腎臓性高血圧,ホルモンの異常から起るものを内分泌性高血圧といい,原因の分らないものを本態性高血圧と,一応原因的には分類されてはいますが,何故血圧が高くなるかということになると,中々はつきりしたことが分りません.従つて治療する場合には原因療法ということが出来ません.例えば結核や肺炎のような細菌から起る病気では,その病気を起す細菌を殺すような薬を使えばその病気がなおります.これが原因療法ですが,高血圧では,その原因がはつきりしない為に原因療法が出来ないということになるわけです.従つてその治療も主な症状である高い血圧を薬によつて下げるという,対照療法になるわけです.そこで高血圧の人は,治療をするとしないとにかかわらず,いろいろの検査で高血圧の程度をしらべることが必要になります.高血圧という病気がある一定期間以上つづくと,脳,心臓,腎臓などにいろいろの変化が起つて来ますので,このような大切な臓器がどのような状態になつているかということをしらべる必要があるわけです.
そこで高血圧という病気の人にはどんな検査が必要か.そしてその検査はどんな意味があるかということについて簡単に述べてみましよう.
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