特集 神経系疾患と臨床検査
Ⅴ.神経病理
2.末梢神経
3)末梢神経病変の電顕
大西 晃生
1
Akio OHNISHI
1
1産業医科大学神経内科
pp.1527-1531
発行日 1997年10月30日
Published Date 1997/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903542
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はじめに
末梢神経の組織病理学的評価には,光学および電子顕微鏡学的検討が必要である1,2).しかし,症例によりまたその評価の目的に応じて,詳細な光学顕微鏡学的評価を行い,同様の症例について論文および成書に記載されている電子顕微鏡学的所見を参考にすれば,必ずしも電子顕微鏡学的検査を行わなくてもその評価の目的を十分達成することが可能である(例えば,亜急性発症の多発単神経炎が認められ,臨床所見から結節性多発動脈炎が強く疑われ,血管炎と神経線維の変性の証明を目的とする場合).しかし,臨床診断の確定と治療方針の決定・選択を目的として評価対象とする腓腹神経では,①直径5μm以下の小径有髄線維および直径2.5μm以下の無髄線維が多数存在し,光学顕微鏡レベルのみの評価の信頼性が低いこと,②Schwann細胞,周鞘上皮細胞などの細胞質内封入体の形態学的な同定には電子顕微鏡学的観察を前提とすること,③有髄・無髄線維軸索およびSchwann細胞細胞質の細胞小器官の同定は電子顕微鏡学的観察なしに不可能であること,④髄鞘の主周期線(major dense line;MDL)および主周期線間線(intraperiodlines;IPL)の同定・観察は電子顕微鏡学的観察なしに不可能であること,⑤基底膜構造を有するSchwann細胞と基底膜構造を有しない線維芽細胞,大食細胞および浸潤細胞との鑑別は光学顕微鏡レベルで困難なことから,腓腹神経の電子顕微鏡学的所見はその病態把握に不可欠である.
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