検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
電顕の免疫反応
武田 善樹
1
,
岸本 敦子
1
,
浦野 順文
2
1神戸大学医学部第一病理
2神戸大学病理
pp.541-544
発行日 1981年7月1日
Published Date 1981/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205336
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免疫反応は,生きた細胞相互間で,また抗体や補体系との関連で進行するものである.抗原や補体を損なわないために,1955年Coons1)以来,専ら凍結切片による螢光抗体法が光顕的に用いられてきた.しかし螢光標識物質は,電顕上のマーカーとしての有意性を欠き,初期の凍結切片は電顕的な形態観察に耐えなかった.一方従来の電顕技術では,アルデヒト系の固定,オスミウム固定が標本作製中に用いられ,免疫反応や抗体の補捉などは,不可能と思われていた.
抗原の局在を知るため,抗体に電顕観察に耐える標識を付ける試みは,1961年Singer2)によって金属(フェリチン)で行われた.さらに,1966年Nakane3)らによって,電顕用マーカーとして,ワサビ由来のペルオキシダーゼを用いる酵素抗体法が紹介された.当時,電顕形態のみを研究手段としていた者にとって,この螢光抗体法から,電顕領域に紹介された手法は大変な驚きをもって迎えられた.固定された試料中に抗原性が残っていて,これを電顕的に標識しうるとは思えなかった.
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