Senior Course 病理
筋疾患の電顕による検索
三杉 和章
1
,
三杉 信子
2
1神奈川県立こども医療センター検査科
2神奈川県立こども医療センター整形外科
pp.223
発行日 1972年2月15日
Published Date 1972/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907537
- 有料閲覧
- 文献概要
筋疾患の種類は数多いが,一般に筋自体に異常のあるもの(筋原性),支配する神経系に異常のあるもの(神経性),内分泌器管や電解質異常によるもの(代謝性)などに大別されている.診断確認のために筋力テスト,神経学的検査,家族歴の調査,クレアチンホスフォキナーゼやアルドラーゼなどの生化学検査,筋電図,筋生検などが行なわれる.これらの所見を総合して診断が決定されるが,筋生検の病理学的検索は中でも重要な位置を占めている.検査法としては通常のH・E,PTAH,アザン染色のほかに,酵素活性や神経筋接合部の検索のために種々な組織化学的染色が用いられている.最近では電顕も盛んに使用され,光顕では見いだしえなかったいく多の変化を明らかにしているので,そのいくつかを記したい.
正常の筋を電顕でみると,アクチンとミオシンの規則正しい配列によって生ずるA,I,Z,H,Mなどの帯と,それを複雑にとりまく小胞体系や糸粒体がみられる.筋原性疾患の代表ともいえる進行性筋ジストロフィー症では,筋原線維の配列の乱れ,断裂,消失など多彩な変化とともに図1(210ページ)に示すようなZ帯を中心としたZ帯の流れと呼ばれる変化を示す.これに似た変化は一見正常にみえる保因者(患者の母親など)の筋にも軽度ではあるが,しばしばみることができる.それゆえ,電顕による検索は保因者の検索,あるいは患者の早期発見の方法としてきわめて有用なものと思われる.
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.