特集 神経系疾患と臨床検査
Ⅴ.神経病理
ミニ情報
神経疾患とin situ hybridization
西山 和利
1
1Department of Neurobiology, Harvard Medical School, U S A
pp.1500
発行日 1997年10月30日
Published Date 1997/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903534
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in situ hybridization法(ISH)は組織切片上でmRNAを検出する組織学的手法である.昨今の分子生物学的手法の進歩は従来のDNAオリゴプローブによる方法にかわってRNAプローブによるISHを容易なものとし,mRNAの検出感度が飛躍的に進歩した.筆者らは各種神経変性疾患の剖検組織を用い,疾患関連遺伝子のmRNAをISHで検討している.誌面の関係上,方法論の詳細は拙報〔文献1~4〕に譲るが,RNAプローブを35Sなどの放射性物質でラベルしたものを用いることにより,従来は困難であったような微量のmRNAを組織切片上で検出し,その遺伝子の発現パターンを調べることが可能になっている.
組織上でのある分子の分布を調べる方法としては免疫染色が従来頻用されているが,ISHの利点としてはある遺伝子が発見された後にその分子に対する特異的抗体がなくとも発現部位を詳細に調べ得る点が最大である.mRNAの検出法としては従来のノーザンプロットと異なり,ISHでは個々の細胞レベルでのmRNA発現を検討できる点も長所である.さらに筆者らの報告のようにISHで得られた画像をコンピューター解析することにより,細胞ごとの相対的なmRNA量を半定量的に比較検討することも今日では可能となった3).またISHはある分子が蛋白に翻訳される前の段階であるmRNAの増減を示すため,核酸レベルでの遺伝子の発現の変化を検索しうる.このようにISHは免疫染色に比較しても種々の利点を有しており,かつ昨今は感度の高い方法論も確立したので,今後は免疫染色とともにますます神経病理学的検討に汎用されるものと期待されている.
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