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サルモネラの食菌抵抗性
川上 貴敏
1
,
檀原 宏文
1
1北里大学薬学部微生物学教室
キーワード:
サルモネラ
,
二成分制御系
,
ハウスキーピング遺伝子
Keyword:
サルモネラ
,
二成分制御系
,
ハウスキーピング遺伝子
pp.702-706
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903351
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はじめに
サルモネラ(Salmonella)は食中毒といった局所感染のみならず,腸チフス,パラチフス,敗血症といった全身感染を引き起こし,現在もなお臨床的に重要な問題を引き起こす病原細菌である1).サルモネラによって引き起こされるそれらのサルモネラ症は,サルモネラの病原性に関与する因子と,それらにかかわる宿主因子との相互作用により規定される2).またサルモネラは細胞内寄生細菌であり,その性質はサルモネラのビルレンスを考えるうえで非常に重要である.一般に細胞内寄生性であることは,感染宿主の免疫系から逃避するために有利である3).これと関連してサルモネラは食菌抵抗性を有しており,マクロファージを代表とする食細胞内で生存することが可能である4).経口感染経路では,サルモネラは小腸,大腸の粘膜上皮細胞(主としてM細胞)から侵入し,さらにその下部の固有層に存在しているマクロファージや多形核白血球に取り込まれる5,6).特にマクロファージは感染初期における感染防御に重要な細胞であり,この細胞の機能はその後の免疫機構に多大な影響を与えることが知られている.しかしながら,サルモネラはマクロファージの殺菌作用を免れることにより,サルモネラ特異的免疫系の成立を妨げ,より重度な感染症状を呈することが考えられる.このような観点から,サルモネラの食菌抵抗性がサルモネラ症の進展において重要な位置を占めることが推測される.本稿では,特にサルモネラの食菌抵抗性に関連した最近の知見を紹介したい.
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