今月の表紙 深在性真菌症の臨床検査シリーズ・1
アスペルギルス症(1)
山口 英世
1
,
内田 勝久
1
1帝京大学医真菌研究センター
pp.484-485
発行日 1997年5月15日
Published Date 1997/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903304
- 有料閲覧
- 文献概要
アスペルギルス属菌種(Aspergillus spp.)は,自然環境内に普遍的に生息する腐生性の糸状菌であり,空中浮遊真菌,室内塵埃から分離される真菌,穀物食品中でのマイコトキシン(かび毒)産生菌の代表的なものとして知られている.そのため,Aspergillusは,気管支喘息などのアレルギー性疾患やマイコトキシン中毒症の原因となるのみならず,臨床検査室の二次汚染菌としても問題を引き起こすことが少なくない.しかし,本菌による医療上の最も重要な問題は,肺アスペルギルス症をはじめとするさまざまな病型・病態を持つ感染症の起因菌となることにある.
環境中に生息するAspergillusは,分生子を豊富につくる.これが風に乗って飛散すると,しばしばヒトの上気道から吸入される.こうした分生子は,ときには副鼻腔などの上気道のさまざまな部位に定着し,宿主の免疫能が低下した場合などは下気道からさらに肺実質に侵入して感染を引き起こすことが少なくない.その結果,種々の病型の肺アスペルギルス症(侵襲性肺アスペルギルス症,菌球型アスペルギルス症,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症など)を発症し,特に侵襲性病型の場合には血行性に全身諸臓器へ播種することもまれではない.これらの深在性または全身性感染に加えて,Aspergillusによる外耳道,皮膚,角膜,副鼻腔などに限局する局所感染もみられる.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.