今月の主題 Helicobacter pylori
巻頭言
Helicobacter pyloriの細菌学
中澤 晶子
1
Teruko NAKAZAWA
1
1山口大学医学部微生物学講座
pp.125-126
発行日 1997年2月15日
Published Date 1997/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903231
- 有料閲覧
- 文献概要
Helicobacter pylori(H.pylori)は極鞭毛を持つグラム陰性微好気性らせん菌で,ヒトの胃に感染する.本菌の感染率は,各種胃・十二指腸疾患患者で有意に高く,胃炎や消化性潰瘍,胃癌,mucosa-associated lymphoid tissue(MALT) tumorの成因として注目されている.特に好中球浸潤を特徴とする慢性活動性胃炎と十二指腸潰瘍については,H.pyloriの除菌が組織学的炎症の軽減や潰瘍の再発防止に著しい効果を示すことが報告され,除菌治療法の検討が緊急の課題となっている.
ヒト胃内にらせん菌が存在するとの報告は比較的古くからあるが,胃疾患との関連は不明確であった.1970年代,内視鏡による生検の組織学的検査が広く行われるようになって,らせん菌は再び病理学者の注目を集めることとなった.1979年,Warrenはらせん菌が存在する胃炎は多形核白血球の浸潤が著しいことを報告し,次いで1983年,WarrenとMarshallは,胃生検標本をスキロー培地で5日間微好気培養することにより,らせん菌の分離培養に成功した.この細菌は当初,形態と培養性状からCampylobacter属に分類されたが,1989年Goodwinらは,有鞘性鞭毛,脂肪酸組成,5Sと16SのrRNA遺伝子の塩基配列などからHelicobacter属を提唱した.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.