特集 血栓症と血小板凝固線溶系検査
血栓症の検査
3.線溶系の検査
6) PAI-1
三室 淳
1
Jun MIMURO
1
1自治医科大学医学部血液医学研究部門止血血栓
pp.165-167
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903114
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原理・測定意義
血管内に血栓が生ずると,血栓を溶解するメカニズムすなわち線溶系が働き出す.この血栓溶解が早すぎれば出血を,逆に遅すぎれば血栓の増大から血管の閉塞をきたす.線溶反応の調節に主要な役割を果たしているのがplasminogen activator inhibitor 1(PAI-1)である.凝固反応の結果フィブリン血栓が生じると,フィブリンにプラスミノゲンと組織型プラスミノゲンアクチベーター(tPA)が結合する.その結果,tPAによりプラスミノゲンがプラスミンに変換され,プラスミンがフィブリンを分解する(図1).
血栓溶解はPlgの活性化段階ではtPAのインヒビターであるPAI-1により,プラスミンが生じた後はプラスミンのインヒビターであるα2プラスミンインヒビター(α2PI)により制御調節されているが(図1),α2プラスミンインヒビターはフィブリンα鎖に結合しているため血栓溶解が起こり始める初期で血栓溶解を抑制する.しかし,血栓溶解がいったん始まると血栓溶解を遅らせる作用は弱く,プラスミンの作用を血栓上にとどめてプラスミンによる他の血漿蛋白や細胞膜蛋白の分解を防ぐことに主要な作用がある.先天性欠乏症や著明な肝機能障害がない限り,プラスミノゲンやα2プラスミンインヒビターの血液濃度はほぼ一定に保たれているのに対し,種々の刺激によりtPAやPAI-1の血液濃度は大きく変動する.
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