特集 血栓症と血小板凝固線溶系検査
血栓症の検査
2.血液凝固系の検査
6) TAT
東原 正明
1
,
宮崎 浩二
2
Masaaki HIGASHIHARA
1
,
Kouji MIYAZAKI
2
1東京大学医学部第一内科
2東京大学医学部第一内科教室
pp.121-122
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903097
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原理・測定意義
DICなど血管内に血栓が多発する疾患では,血管内にトロンビンが生成されている.このトロンビンは,①フィブリノゲンをフィブリンに変換する,②第V因子,第Ⅷ因子,第ⅩⅠ因子,第ⅩⅢ因子を活性化する,③血小板を活性化する,④血管内皮細胞を刺激するなどの生理活性を有していて,この血中のトロンビンを測定することは,凝固亢進状態,血栓傾向を示す大きな指標となる.しかしながら,トロンビンは,生体が備えている抗血栓性のメカニズムにより生成されても,すぐに中和されて直接測定することは困難である.この中和作用として,antithrombin Ⅲ(ATⅢ)との複合体形成,フィブリンへの吸着,トロンボモジュリンとの複合体形成,ヘパリン・コファクターⅡとの複合体形成が挙げられる.ATⅢは分子量58,000の糖蛋白で,heparin cofactor Ⅰとも呼ばれserpin (serine protease inhibitor) superfamilyに属し,血中濃度は約150mg/mlである.ATIIIとトロンビンとの複合体,thrombin-antithrombin complex(TAT)(1:1の等モル比結合)の形成は,以下のように進行することが明らかにされている.
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