特集 血栓症と血小板凝固線溶系検査
血栓症の病態
3.動脈硬化と血栓症
岸 幸夫
1
Yukio KISHI
1
1東京医科歯科大学医学部第三内科
pp.37-41
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903068
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はじめに
血栓症は急性心筋梗塞,脳梗塞をはじめとしてしばしば致死的な結果を招くが,臨床的に重要な動脈血栓症はほとんど動脈硬化病変の素地のもとに形成される.実際,動脈硬化疾患患者は"血栓準備状態"とされ,血小板の活性化,凝固亢進などの指標が陽性を示すことが知られている.逆に,動脈硬化の成因において血栓の形成が種々の面で関与することが明らかにされており,動脈硬化と血栓症とは不可分の関係にある.この20年あまりの間に細胞生物学,分子生物学の手法を用いた研究が進み,両者の関連について多岐にわたる検討が行われた.なかでもその中心をなしているのが血管内皮細胞に関する研究の進歩であり,動脈硬化,血栓症ともにその発症には血管内皮細胞の機能障害が大きな役割を担っていることがわかった.また,臨床面においても,Fusterらの研究により,冠動脈硬化病変(動脈硬化)からの急性心筋梗塞(血栓症)への移行機転が解明されつつある1).
そこで本稿では,前半でまず臨床面から動脈硬化性疾患での"易血栓性""血栓準備状態"のメカニズム,動脈硬化症を基盤とした急性血栓症の典型例としての急性心筋梗塞の発症機序を紹介し,後半は血管内皮細胞の関与を中心に動脈硬化→血栓あるいは血栓→動脈硬化への過程を基礎的な面を含めて考察を加える.
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