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抗下垂体抗体
小林 功
1
1群馬大学医学部臨床検査医学
pp.30
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902166
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生体の主要臓器には炎症,腫瘍,変性や自己免疫など多彩な病態が存在する.それでは脳下垂体においても,白己免疫による病変はありうるのだろうか?1962年Goudieらは,橋本病に合併したanteriorhypophysitisと診断した剖検例を発表している.下垂体自己免疫を示唆する一連の研究成果は,ヒト下垂体凍結切片を用い間接蛍光抗体法を用いたBottazzoらを中心して発表され,近年ようやく下垂体を場とする自己免疫の集積の時代に入っている.
1986年杉浦らにより開発された血中下垂体抗体の測定法は,ラット下垂体細胞を抗原とし,ビオチン抗ヒトIgGとFITC標識アビジン系による間接蛍光抗体法で臓器特異性抗体を検出する1).次いで開発された高感度測定法は動物由来下垂体前葉細胞(ラットGH3細胞,マウスAtT-20細胞)膜抗体を検出する2).これらの方法を用いて,筆者らの報告3)を含め,インスリン依存型糖尿病,ACTH単独欠損症,バセドウ病,橋本病,empty sella症候群などの病態で,比較的高率に,下垂体抗体が検出されることが明らかとなった.中枢性尿崩症の約3割にarginine-vaso-pressin (AVP)分泌細胞に反応する血中自己抗体を有するという報告もある.
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