ひと―ベノジェクトⅡリレー訪問
高橋 正宜
土田 一男
発行日 1994年1月15日
Published Date 1994/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901855
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小説に序章があり終章があるように,人生ではいくつかの転機に出会うことが多い.私は元来ケセラセラ型で標準線を行くつもりであったから,卒業後病理学の選択も安易な気持ちで,先輩の奨めに応じただけであった.戦後の留学は,外貨の乏しい日本では米国のフルブライト資金や西独のフンボルト資金などが主要な奨学金で,フルブライトを選んだのは新鮮な米国学派の臨床病理に接してみたかったからである.
当時の大きな病理学の成書の1つにAndersonの名著があり,Anderson教授の指導を受ける機会を持ちたいと思っていた.実際には,病理学の一分野である細胞診断学を学ぶ(Hopman準教授)ことを通してAnderson先生に接する機会をやっと得ることができた.ばらばらの剥離細胞像から得る腫瘍や内分泌異常,炎症など,臨床情報の広さと美しいPapanicolaou染色との出会いは,帰国後某国立大学助教授の椅子をお断りし,母校の病理学教室を去る転機となることになった.序章はまさに波乱万丈であった.
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