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直腸の粘膜脱症候群
佐藤 明
1
1東京大学病理学
キーワード:
直腸
,
粘膜脱症候群
,
直腸孤立潰瘍
Keyword:
直腸
,
粘膜脱症候群
,
直腸孤立潰瘍
pp.98-99
発行日 1994年1月15日
Published Date 1994/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901843
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耳慣れない言葉であるが,文字どおり大腸,ことに直腸粘膜の脱出(肛門外へ脱出する顕在直腸脱と脱出しない潜在直腸脱がある)に起因すると考えられる一連の疾患で,特徴的な臨床ならびに病理像を呈する.本病態の名称については多少の混乱がある.すなわち,初期には直腸孤立潰瘍(solitary ulcer of the rectum)1)と呼ばれ,各年齢層の男女に発症するが,特に若年者の直腸前壁にみられる孤立性潰瘍病変で,病理組織学的には粘膜固有層の線維筋症が特徴であるといわれた.
その後,潰瘍の多発する例や潰瘍のない平坦な例,逆に隆起した例もあり,これらは前述した共通の組織像を有していることから"症候群"という語が付加され,直腸孤立潰瘍症候群と呼ばれるようになった.さらに,直腸脱・痔核脱出・結腸瘻・回腸瘻の粘膜や慢性腸重積の被覆粘膜にも同様の組織像がみられ,これらの粘膜病変の共通原因が粘膜脱出に求められることから,十年ほど前に粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome2);MPS)という名称が提唱された.臨床像,病理形態学的ならびに生理学的な知見が集積されるに従い,MPSが用いられるようになってきている.
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