特集 遺伝と臨床検査
序文
遺伝と臨床検査
三輪 史朗
1
Shiro MIWA
1
1(財)冲中記念成人病研究所
pp.5-6
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901270
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染色体検査技術が進んで,染色体異常に基づく種々の病気(症候群)が確立されてくる一方で,遺伝子解析技術の最近の進歩は目覚ましく,最近次々に遺伝病(特に単一遺伝子によるもの)の病因が遺伝子レベルで,塩基の置換,欠失,挿入などにより生ずることが明らかにされてきた.成人病といわれる病気(糖尿病,高脂血症,痴呆など)ですら,その一部のものは単一遺伝子病であることが知られるようになった(インスリンレセプター異常による糖尿病,家族性高コレステロール血症による心筋梗塞,アルツハイマー病など).これまで謎とされていた発癌機構も,遺伝子(癌遺伝子,癌抑制遺伝子)との関連においてかなり明らかにされてきたことも驚きである.
重要なことは,遺伝子解析技術がきわめて速い速度で進歩していることであって,現在各国で始まったヒト染色体を構成する全塩基配列を決めようというヒトゲノムプロジェクト,さらには遺伝病を遺伝子を修正して治そうという遺伝子治療,それに伴う倫理的問題も早急な対応を迫られるまでになってきた.また妊娠早期に,胎児が重症遺伝病に罹患する異常遺伝子を持っているか否かを決める出生前診断が可能な病気も増えつつあり,遺伝カウンセリングの役割と責任もたいせつになってきた.
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