- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.はじめに
私の大学卒業は1951(昭和26)年で,1年のインターンののち国家試験を受けて医師免許証をもらい,患者を受け持った時代であり,この頃中央検査部はまだできておらず,入院患者があると,病室で病歴を取り,診察をしてどういう病気かの見当をつけ,次に検査として,耳たぶから採血し,メランジュールと計算盤,ザーリー計を使って赤血球数,白血球数,ヘモグロビン濃度,顕微鏡を使って好中球,好酸球,リンパ球,単球の比率を調べ,血沈を測り,尿に蛋白,糖があるかを調べ,レントゲン写真は教室(私の場合,東京大学冲中内科)のレントゲン技師に頼んでとってもらい,それらを病歴にまとめ上級医師のチェックを受けながら診断(ないし仮診断)をつけ,治療(処方箋を出す・注射をするなど)をはじめた.教授回診,助教授回診はそれぞれ週1回あり,重症入院,患者様態悪化のときは,朝早くに教授回診があった.重態の時は当直室に泊り込むことが多かった.冲中先生からは患者の徴候のわずかな変化を見逃さないようにすることを教えられた.
こんな時期から10~20年の間に東大病院は整備され中央臨床検査部は樫田良精先生が教授となり,検査部は立派になった.機器が整備され,スペースが増え,検査技師が増え,検査部の医師も増えた.中央検査部の発展の仕方は個々の病院で特殊性に応じて差があった.
ほぼどんな検査も検査伝票にチェックすればできるようになった昨近になると,最近の臨床医には視診,打聴診,触診,といった基本的な診断手技をきちんと身に付けていることの大切さ,逆にいえばこれをおろそかにしないようにすることを強調したい,と同時に検査成績は時間をかけて読み,異常値を見逃さないように注意したい.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.