今月の主題 大腸疾患と検査
技術解説
アメーバ症の血清診断
奥沢 英一
1
,
竹内 勤
1
Eiichi OKUSAWA
1
,
Tsutomu TAKEUCHI
1
1慶應義塾大学医学部熱帯医学・寄生虫学教室
キーワード:
赤痢アメーバ症
,
血清診断
,
非特異免疫反応
Keyword:
赤痢アメーバ症
,
血清診断
,
非特異免疫反応
pp.480-485
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901071
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慢性感染症の1つである赤痢アメーバ症において血清診断の信頼性は高い.血清反応に関与する抗原抗体系は,概念上2群に大別される.
1つは虫体が腸管腔内に存在する時点ですでに陽性となるものである.この系に関与する抗体は非特異的であるが,急性期に高率に検出される.このため,除外診断の指標として利用することができる.ただし,無症状者や他原虫感染でも陽性となるので積極診断には不適である.
もう1つは虫体が組織内侵入しない限り陰性となるものである.この系は特異的で積極診断の指標とできる.ただし,虫体の組織内侵入を経験し治癒して初めて上昇するので,初発急性期には低値である.
血清診断は簡便かつ信頼性の高い方法であるが,決して万能ではない.特に,症状(組織侵入)の指標とされる特異抗体が,軽症例で高率に検出されるのに対し,重症例で低値を示すという逆説的現象には注意が必要である.
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