特集 アレルギーと自己免疫
I.免疫機能―最近の進歩
5.自己免疫の成立
1)自己抗原と分子相同性
山本 一彦
1
Kazuhiko YAMAMOTO
1
1東京大学医学部物療内科
pp.48-49
発行日 1991年11月30日
Published Date 1991/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542900795
- 有料閲覧
- 文献概要
はじめに
自己免疫の成立機序は不明であるが,その1つの可能性として自己抗原と外来微生物の分子相同性が考えられている.寄生体とホストの抗原エピトープの相同性1)ということで最初に定義された分子相同性の頻度は意外に高く,たとえば11種類のウイルスに対してマウスで作製した600以上のモノクローナル抗体を,正常のマウスの各臓器との反応性でスクリーニングすると,そのうち3.5%に反応性を認めたとの報告もある2).
分子相同性はmolecular mimicryの訳である.mimicryとは本来,擬態という意味で,動物が別の生物または非生物に似た形態や色彩を持っことによって,他の動物からの攻撃から自己を守ることを指している.したがってmolecular mimicryとは,本来の意味では,寄生体にとって抗原エピトープの相同性から,ホストの中での生存に有利であることを指すべきであろう.このような点では,molecula mimicryは分子擬態と訳されるべきであろうが,表裏一体を成すものとして,抗原性の相同性からホスト側に自己免疫現象を惹起する可能性があるので,これらを含めて広義に分子相同性と訳すことが多い.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.