TOPICS
D型肝炎
岩波 栄逸
1
,
矢野 右人
1
1国立長崎中央病院臨床研究部
キーワード:
D型肝炎
Keyword:
D型肝炎
pp.985-986
発行日 1990年8月15日
Published Date 1990/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542900243
- 有料閲覧
- 文献概要
1977年,イタリアのRizzettoらは,HBVキャリアの肝細胞核内にHBc抗原とは異なった新しい抗原抗体系を発見,δ(デルタ)抗原と命名し報告した1).当初,このδ抗原はHBV関連マーカーの1つでHBc抗原の亜型と考えられていたが,1980年,δ抗原陽性患者の血清によるチンパンジーへの感染実験で,HBVとは別の感染因子(δ因子)として肝炎を発症させることが実証された2).後に,このδ因子は,HBs抗原を外被として,core部分がHBc抗原の代わりにδ抗原とRNAゲノムに置換された構造をもつウイルス粒子で,さらにこのRNAゲノムは不完全なため増殖にはHBVの補助機能を必要とすることもわかった.したがって,δ因子はHBVと常に共存することになる.
1989年,米国カイロン社から発表されたC100抗体は,従来非A非B型と分類されてきた肝炎の大半に検出され,C型肝炎の位置付けが明確となった今日,肝炎はA型,B型,C型,このδ因子によるD型,および東南アジアで流行性に水系感染するとされるE型,に分類されるに至った.
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.