今月の主題 レセプター
巻頭言
レセプター研究の歴史と展望
尾形 悦郎
1
Etsuro OGATA
1
1東京大学医学部内科学第四講座
pp.887-888
発行日 1990年8月15日
Published Date 1990/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542900223
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受容体研究,この場合正確にはホルモン受容機構研究はfactとconceptとの間の鎬の削りあいを通して発展してきたとも言えよう.
1942年,F.Albrightは当時使用可能となった副甲状腺ホルモンにより副甲状腺機能低下症患者の補充療法を試み,その一例でこれが失敗に終わったことより,この患者の副甲状腺機能低下症の病態は副甲状腺ホルモンの不足によるのではなく,このホルモンに対する受容機構の障害であるというconceptに達した.ここには,副甲状腺ホルモンが使用可能となったという事実,およびこの症例においてのみそれに対する反応が得られなかったという事実が中心となっている.さらにこのconceptの源流としては,今世紀始め頃から気が付かれていたチャボの一種Seabright-bantamをめぐるconceptがあった.すなわちこのチャボは雄でありながら雌の表現型をとる.したがって男性ホルモンに対し末梢の標的組織が十分に反応しないと考えられた.この考えを敷衍して,ホルモン不全症の中には,ホルモンに対する不応状態があるというconceptがあった.1950年代に入り,ホルモン作用機構の研究が進み,1960年までにホルモン作用機構においてホルモン受容体とそれに引き続き産生される細胞内second-messengerの一つとしてcAMPの意義が確立した.
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