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はじめに
レセプター遺伝子のクローニングは,初期の段階ではレセプター蛋白を精製した後ペプチド配列由来の合成オリゴヌクレオチドをプローブに用いてライブラリーをスクリーニングする方法によってなされていた。この手法でロドプシン8),β-アドレナージックレセプター7),ムスカリニックアセチルコリンレセプター20),ニコチニックアセチルコリンレセプター34)などの塩基配列が決定されていった。これらのさきがけ的研究の成果によって,レセプターの構造に類似性のあることが明らかとなり,細胞膜貫通部位などの塩基配列の保存されている部位をプローブに用いるクロスハイブリダイゼーション(cross hybridization)法がさかんに用いられるようになり,また同時期に急速に普及することとなったPCR (polyme-rase chain reaction)法44)の利用と相俟って多くのレセプター遺伝子がクローニングされるに至った。さらにin vitroにおけるmRNAの転写とオーサイトを組み合わせた発現システムやcDNAライブラリーを効率良く培養細胞に発現することが可能なベクター系とフローサイトメトリーなどの利用による発現クローニングも応用されるようになり,サブスタンスK(NK2)レセプター27)やインターロイキン-6(IL-6)レセプター61)のクローニングに用いられ成功を収めた。このような流れの中で,生理学的にあるいは薬理学的に存在が確認されているレセプターの大半がクローニングされるに及んで,多くのラボを巻き込んだレセプター遺伝子クローニングのコンペティションは一段落ついた感がある。とくに中枢神経系のレセプターの研究を押し進めてきた研究者にとって,記憶などの脳の高次機能に密接に関係していると考えられてきたNMDAレセプターの中西らのグループによるクローニング31)によって,少なくともレセプターのクローニングという点に関しては大きな峠を越えたと言っても過言ではない。そこでこの機会に現在までにクローニングされたレセプターを分類し,まとめたものが表1である。今まで免疫担当細胞などの末梢に発現すると考えられてきたレセプターが,神経系においても発現し機能していることがサイトカインレセプターなどで報告されるようになり,同じレセプターが,発現する細胞によって異なる生理機能に関与していることが次々に明らかにされつつある。表には現在までにノーザンプロット,PCRまたはin situ hybridizationなどによって神経系で発現することが確認されたレセプターを同時に示してある。
レセプターは細胞外のシグナルを細胞内に伝達する分子である。たとえば神経伝達物質のレセプターは,伝達物質がレセプターに結合することによって細胞内のサイクリックAMPやイノシトールリン脂質/Ca動員を変化させることによって,細胞外の情報を細胞内に伝える役割を担っている。従来の考えからすると細胞外の遊離物質のみがそのような伝達物質として働いているものととらえがちであるが,インテグリンなどの接着因子にも細胞外マトリックスと接着する事によってpp125FAKと呼ばれるチロシンキナーゼが活性化される46)という知見や,オリゴデンドロサイトに発現するL-MAGがチロシンキナーゼの一つであるFynと物理的な会合をし,シグナル伝達に関与する可能性を示唆する報告もあり,レセプターの概念も今後は広くとらえていく必要がある。
Recent advance of molecular cloning has revealed the amino acid sequences of many type of receptors. These can be divided into several class of receptors by their secondary structure. All receptors have at least one transmembrane (TM) domain except for nuclear receptors.
In G protein-coupled receptor class, subunits show common structure with seven-span transmem-brane domain. These receptors transduce signals via G proteins which interact with recognition sequence in intracellular face of receptors and modulate the production of second messengers. Recently, small subsets of receptors have been cloned. These are metabotropic glutamate receptor subclass and secretin receptor subclass, which exhibit no sequence homology in transmembrane domains with any other G protein-coupled receptors.
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