今月の!検査室への質問に答えます・13
直接抗グロブリン試験陽性の自己免疫性溶血性貧血患者を中心に輸血前検査について教えてください
岸野 光司
1
1自治医科大学附属病院輸血・細胞移植部
pp.312-315
発行日 2024年3月15日
Published Date 2024/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542203552
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はじめに
自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia:AIHA)1)は,自己の赤血球膜抗原に対する自己抗体が産生されることにより,赤血球が溶血(破壊)されて生じる貧血である.自己抗体の産生につながる病因の詳細はいまだ不明な部分が多い.また,自己抗体が赤血球と反応する至適温度により,温式AIHA(体温37℃付近の場合)と冷式AIHA(低温の4℃で最大活性を示す場合)に大別される.さらに冷式AIHAの病型には,寒冷凝集素症(cold agglutinin disease:CAD)と発作性寒冷ヘモグロビン尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria:PCH)の2病型がある.AIHAの90%以上は温式AIHAである1).
AIHAの診断基準1)には,直接抗グロブリン試験(direct antiglobulin test:DAT)が陽性になることが重要な検査所見の1つとなっている.DATは,生体内ですでに赤血球膜に結合している免疫グロブリン(immunoglobulin:Ig)Gまたは補体成分を検出する方法である.DAT陽性者の輸血検査では,血漿(血清)中の抗赤血球自己抗体や赤血球に結合している自己抗体により,血液型検査,不規則抗体検査,交差適合試験に影響を及ぼすことがある.
本稿では,DAT陽性のAIHA患者の輸血前検査について,検査試薬も含めて解説していきたい.
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