増大号 検査血液学レッスン 検査結果の乖離をどう判断するか
4章 凝固
複数の凝固因子インヒビター陽性(LAHPS/LLS)
内藤 澄悦
1
,
家子 正裕
2,3
1北海道医療大学病院/歯科クリニック臨床検査部
2岩手県立中部病院血液内科
3岩手県立中部病院臨床検査科
キーワード:
ループスアンチコアグラント
,
LA
,
抗プロトロンビン抗体
,
後天性血友病A
,
AHA
,
LAHPS
,
LAHPS-like syndrome
,
LLS
Keyword:
ループスアンチコアグラント
,
LA
,
抗プロトロンビン抗体
,
後天性血友病A
,
AHA
,
LAHPS
,
LAHPS-like syndrome
,
LLS
pp.1272-1275
発行日 2022年10月15日
Published Date 2022/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542203153
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はじめに
ループスアンチコアグラント(LA)は抗リン脂質抗体(aPL)の1つであり,抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断的検査所見の1つでもある.また,LAを含むaPLはそれぞれが独立する血栓危険因子であるが,まれに出血症状に関与することがある.主に感染症や自己免疫疾患を基礎疾患とした小児および若年女性のLA陽性者に認められ,プロトロンビン活性の低下を伴う.プロトロンビンそのものに対するaPLではない自己抗体(anti-FⅡ Ab)が検出される場合が多く,LAHPS(LA-hypoprothrombinemia syndrome)と呼ばれている1).LAHPSは当初,感染症後の小児や膠原病に罹患した若年女性に多いとされたが,高齢者での報告も増えてきている2).
プロトロンビン活性は正常で,その他の凝固因子活性が低下し,時に出血症状を認めるLA症例に遭遇することがある.LAHPSに類似した症例のため,LLS(LAHPS like syndrome)と呼ばれている3).LAの臨床的意義は血栓リスクであるが,LAを基本病態とするLAHPSやLLSは時として著しい出血症状をきたす極めてまれで複雑な病態と考えられている.
本稿では,LAHPSやLLSの臨床症状や検査所見,後天性血友病A(AHA)との鑑別方法について解説する.
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