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■はじめに
生体に細菌やウイルスなどの病原微生物や異物(抗原)が侵入すると,抗原を攻撃して排除しようとする物質(抗体)が体内で作られる.B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)感染に関しては,ウイルスの本体であるHBV DNA検査に加えて,HBVマーカーと呼ばれるHBVの抗原および対応する抗体を血液検査によって調べ,症例の病態を判断する.
HBVマーカーの臨床的意義について,表11)に示す.HBV感染者では,肝臓の細胞質内でHBs(hepatitis B surface)抗原,HBe(hepatitis B envelope)抗原が産生され,細胞外へ分泌される.コア抗原〔HBc(hepatitis B core)抗原〕も主に細胞質で産生され,一部は核内に移行しウイルス複製や病態形成にも関連するが,Dane粒子と呼ばれる感染粒子やp22crと呼ばれるHBV遺伝子をもたない空の粒子の構成成分(キャプシド)として細胞外へ分泌される.これらは,HBコア関連抗原(HB core-related antigen:HBcrAg)として検出可能である.
B型急性肝炎の診断には,発症初期の血中HBs抗原・HBV DNAおよび免疫グロブリンM(immunoglobulin M:IgM)-HBc抗体高力価の証明が必要である.IgM-HBc抗体は,B型慢性肝炎の急性増悪時にも低力価上昇を示すことがある.B型慢性肝炎の診断には,HBs抗原陽性,HBc抗体高力価陽性,HBV DNA陽性が重要である.典型的な臨床経過でみられるHBVマーカーの挙動について,一過性感染時(図1)2),持続感染時(図2)2)に分けて示す.
このようにHBVマーカーは,HBV感染の有無を調べるスクリーニング検査,HBV感染既往の確認,B型肝炎ワクチン(HBワクチン)接種効果の判定などに役立つ.一方で,抗原および対応する抗体が共存する症例もみられ,病態の判断に難渋することがある.
本稿では,HBs抗原とHBs抗体の共存例,HBe抗原とHBe抗体の共存例について取り上げ,その原因を解説する.
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