Crosstalk 地域医療×臨床検査・8
先輩からの申し送り
寺裏 寛之
1
1自治医科大学地域医療学センター地域医療学部門
pp.925
発行日 2018年8月15日
Published Date 2018/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542201699
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特定の地域との継続的な付き合いが,地域医療の特徴の1つとされている.自治医科大学はこの継続性の担保について,各都道府県単位でユニークな方式をとっている.同一地域に地域医療従事者を2〜3年程度のスパンで派遣して,継続的に診療をリレーするやり方である.卒業生の多くは地域を転々として経験を積む.このリレーのなかで,先輩からの申し送りを受ける.例えば,北海道では特に東部で勤務するときにエキノコックス症を念頭に置かなければならない場面もあるとか1,2),岩手県沿岸では秋ごろの急性腹症に対して消化管アニサキス症を積極的に鑑別するといった具合である3).
岩手県立千厩病院での80歳代後半の女性の話である.庭の手入れを趣味にしていた.あるとき,数日前から倦怠感を自覚し,ベッドから起き上がることも困難となってしまった.さらに38℃台の熱もでてきたために受診した.診察をしたところ,血圧は128/93mmHgで,咽頭痛はなく,頸部リンパ節腫脹もなかった.さらに,心雑音や異常呼吸音もなく,腹部には平たん・軟性で圧痛はなく,肝腫大もなく,下腿に浮腫もなかった.ただし,体幹部に1cm程度の紅斑が散在していることに気づいた.左大腿内側に発赤を伴う痂皮化した硬結も認められた.血液検査では,WBC 4,800/μLで,CRPは6.1mg/dLと上昇がみられた.その他に,AST 71U/L,ALT 32U/L,ALP 193U/L,γ-GT 25U/Lと,肝機能関連ではASTのみの上昇があり,CKは356U/Lと上昇していた.
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