元外科医のつぶやき・20
治療を行う診断基準
中川 国利
1
1宮城県赤十字血液センター
pp.921
発行日 2016年8月15日
Published Date 2016/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200915
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世界で冠たる長寿国であるわが国では,健康に対する関心が高く,健診が広く行われている.会社では職場健診が,地域では住民健診が行われ,受診者はその結果に一喜一憂する.
健診の目的は早期発見であり,引き続き精査,そして治療を行うことが肝要である.しかしながら,2014年に健診時の判定基準が変わり,混乱が生じている.従来,基準値は各専門学会が決定した値を流用してきたが,日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が健診時の検査値を検討し,独自に基準値を決めた.生活習慣病関連の正常基準範囲は大幅に緩和され,収縮期血圧は129から147mmHgに,総コレステロール上限値は一律199から男性254mg/dLに,女性の65〜80歳は280mg/dLに変更された.したがって,健診で異常を指摘されて病院を受診する患者が減少し,診療を行う専門医からは病気の発見が遅れるという批判が生じている.お互いの立場で基準値が決められたきらいがあり,患者の立場での基準値策定が早期に望まれる.
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